こんにちは!
通訳案内士のaiです。
ガイド業を始めて1年半。
慣れないことも多く最初は本当に大変でしたが、先日初めての指名案件で5つ星レビューを獲得し、
「ようやく仕事が板についてきたのかも」
と、この頃少しだけ、自信がついてきました。
ここまでの道のりは決して平坦なものではなく、理想と現実のギャップに苦しめられたこともしばしば。
「自分にガイドは向いてない」
と、いっそのこと辞めてしまおうと思ったことは何度もあります。
今回の記事では、表に出ないガイドの裏側の部分について、赤裸々にご紹介します。
これからガイドを目指す方にとって、業界理解の一助になれれば幸いです。
スケジュールが全く読めない

これはガイド業に限らず、フリーランスであれば誰もが経験することなのですが、スケジュールが定まらず、急に前日に案件が降ってきたりすることに、最初は非常に戸惑いました。
私が初めて通訳案内士として、インバウンドツアーのお仕事を斡旋してもらった時のお話です。
斡旋してくれたのは、訪日ツアーのマネジメントを専門に手がける旅行会社。
ガイド仲間に「評判が良い」と教えてもらったので、早速面接に出向き、めでたく採用となってからわずか1週間ほどのことでした。
当時の私は、通訳案内士(個人事業主)として活動するため、開業届を役所に出したばかりであり、右も左も分からない状態。
資格は持っていたものの、実務経験はもちろんあるはずもなく、本当に名ばかりの通訳案内士。ただ、日本文化の知識を有しているにすぎませんでした。
ある日、私が外出先から帰ってきてメールをチェックしていると、先日採用になったばかりの例の旅行会社から、メールが来ていたのです。
確か、18時頃だったかと思います。
“先日はありがとうございました。
急で申し訳ないのですが、明後日予定は空いていますか?
都内の半日ツアーを担当してくれるガイドを探しています。
実務は未経験とのことですが、頑張ってチャレンジしてくれるのであれば、ぜひお願いしたいと思っています。”
こんな感じの内容のメールが届いていました。
幸い、依頼日は予定がありませんでしたし、一発目の仕事を断ってしまえば二度と依頼が来ない可能性もあります。
断るわけにもいかず、もちろん引き受けることにしました。
ですが、準備するまであと1日半しかありません。
なんとかツアーは無事終わりましたが、本当に大変でした。
今回は旅行会社からの依頼でしたが、もちろんゲストからの場合も多いにあります。
一説には、ゲストの15%ほどは前日にツアーを探す、というデータもあるほど。
私も、前日にツアー希望の連絡をもらったことは何度もあります。
先の予定が立てられないので、なかなか難しい面もありますが、”フリーランスにはつきものである”と、割り切ってしまうことも必要かもしれません。
横の繋がりは必須

通訳案内士は、個人プレーの仕事。
訪日ゲストのアテンドは、全てガイド1人で行うのが基本。
移動手段がハイヤーなのであれば、経験豊富な運転手の方に助け船を出してもらうことも可能ですが、一旦ハイヤーを降りてしまえば、そこはもう戦場です。
道に迷うことなくゲストを観光地へお連れし、特定の場所で歴史的背景を紹介し、ゲストのニーズを満たしてあげながらも、時間までにきっちり戻ってこなければなりません。
もしもの時の判断も、遅れてしまった時の責任も、全て自分1人。
アテンド中は誰にも頼ることができないので、普段からガイド仲間と密に連携を取り、情報を仕入れておくことが、本当に大切になってくるのです。
私が通訳案内士という職業を知ったのは、大学3年生の時。
英米文学科であったため、語学関係の履修もたくさん存在しており、私はその中にあった「ワークショップ 通訳案内士講座」に目が止まりました。
まだ将来像についてはっきり決まっていなかったものの、
「英語を使える職業に就きたい」
という漠然としたイメージだけは持っていた私。
“通訳”という文字に惹かれ、すぐに履修を申し込みました。
その時、授業を担当してくださったのが、現役の通訳案内士の方。
会議通訳としても全国を飛び回る中、大学の非常勤講師をされていたり、本を出版されていたりと大変忙しい方だったのですが、生徒であった私が試験に合格したことを心から喜んでくださり、親身になって色々とアドバイスをしてくださいました。
例えば、
- 通訳案内士の仕事の取り方
- 登録すべきガイド団体(通訳案内士だけが登録できるガイド団体、というものが複数存在し、そこに登録すると、ツアーの仕事を斡旋してもらえるようになっています)
- ガイドとして楽しかったこと、大変だったこと
など、赤裸々にご経験をお話ししてくださったのです。
通訳案内士を目指す方の多くは、専門のスクールに通い、ガイド仲間と一緒に励まし合いながら試験合格を目指す中、私は独学で試験に臨んだので、ガイド仲間はもちろんゼロ。
私にとっては、その方だけが、まさしく頼りの綱でした。
その方のおかげで、どの団体に入るべきかもご指南いただけましたし、新人研修に参加し横の繋がりを作ることの大切さも教わりました。今でも心から感謝しています。
実際、初めてツアーのお仕事をもらった時は本当に何もわからなかったので、仕事をいただけた(業界用語では、「アサインされた」と言います)ことへの嬉しさ反面、不安で押し潰されそうであり、パニック寸前。
新人研修で出会ったガイド仲間(といっても、そのほとんどは40代以上と、私の親世代。人生の大ベテランばかりでした)に恥を承知で必死でメールしまくり、ガイド業における基本のイロハを教えてもらったのを、今でもまるで昨日のことのように鮮明に覚えています。(笑)
それぐらい、ガイドというのは、いきなり「ぶっつけ本番」の仕事なのです。
この記事を読んでくださっている方の中で、これから
「ガイドを目指したい!できれば資格も取りたい!」
という方は、横の繋がりを少しでも増やすため、ガイドとして生き残るためにも今の内からスクールに通ったり、ガイド向けのイベントに参加してみたりすることを強くオススメします。
ゲストの大半は男性

よく
「どんなゲストが多いですか?」
と聞かれるのですが、本当に様々な国や地域からいらっしゃるので、答えに窮してしまうんですよね。
でも一つ言えることは、ゲストの性別は圧倒的に男性が多いということです。
私もここまでとは予想していなかったのですが、最近のゲストは本当に男性ばかり。
女性が参加してくれることは、結構珍しいです。それも、予約者の奥さんだったりと、女性だけで申し込んでくれるケースは以前よりも少なくなってきたように思います。
また、私は「Tokyo Hidden Gems」というコミュニティも設立し、在日外国人向けのツアーも開催しているのですが、毎回ゲストの9割は男性です。
ツアー内容は、東京の穴場を巡るというものなので、特に男性に向けたものでもないのですが、、
疑問に思った私が、日本に住んで長いある外国人に尋ねてみると、意外な答えが返ってきました。
「そもそも日本に来る外国人は、男性の方が多いと思う。それに日本人女性は、海外の女性に人気がない。”奥さんにするなら日本人”という逸話は有名だし、海外の男性にとって羨望の的であることは変わりないから、疎ましく思われている。」
もちろん、ツアーによって顧客層は全く違ってきますので一概には言えませんが、もしかしたらそういった事実も絡んでいるのかもしれませんね。
この記事を読んでいる方の中には、
「綺麗な外国人女性を案内したい!」
と意気込んでいた方もいるかもしれませんが、何しろ母数が少ないので、残念ながらあまり期待しない方が良さそうです。(笑)
思った以上に稼げない

通訳案内士として舞い込んでくる依頼の多くは、半日で12,000円であったり、終日ツアーで20,000円であったりと、高額案件ばかり。
一見、とても稼ぎやすい仕事のように思えますが、そんな仕事があるわけありません。
確かに勤務時間だけでみると、高時給の良い仕事のように見えますが、その裏には膨大な準備時間を必要とします。
専門用語のチェックから、回る観光地の基礎知識を仕入れ、資料を作り、当日迷ってしまうことのないよう、前日までに何度もコースを自分の足で歩いてルートを確認。
このような作業は、ツアー依頼が入るたびに必要になってきますので、むしろ時給は安い方。
決められた時間働けば、その分の労働対価がきっちり支払われるアルバイトの方が、よっぽど効率よく稼げると痛感します。
また、確かに案件単価が高いことは事実ですが、そう簡単に依頼が舞い込んで来るはずもありません。
ですので、日頃からどんな些細な案件でもきっちりこなすなどして小さな実績を積み上げ、「ツアーを斡旋してもらえるような」一人前の通訳案内士になれるよう、日々努力するようにしましょう。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
通訳案内士になってみてびっくりしたこと、
- スケジュールが全く読めない
- 横の繋がりは必須
- ゲストの大半は男性
- 思った以上に稼げない
4つのギャップについてご紹介しました。
楽な仕事などこの世に存在しないように、通訳案内もまた、決して楽しいことばかりの仕事ではありません。
が、喜んでもらえた時、
「あなたに案内してもらってよかった」
とのお言葉をいただけた時の感動はひとしお。
これからガイドを目指す方々にとって、少しでも参考になれたら幸いです。
この記事を書いた人

“数ある国の中から、わざわざ日本を選んでくれた外国人に、1人でも多く。 正しい知識を持ってリアルな日本を伝え、恩返しをしたい。”
合格率15.6%の難関国家資格「全国通訳案内士」を、23歳という若さで2017年12月に取得。以降、フリーランスの通訳案内士として、東京を拠点に活躍中。趣味はお散歩とカフェ巡り。
旅行好きの両親に恵まれ、幼少期から日本全国を旅し、これまで訪れた都道府県は33県以上。 学生時代はホステルにて勤務、卒業後は旅行業界最大手である株式会社JTBに新卒入社を果たす。
観光業に日々従事する中で、”観光地だけでない、ローカルだけが知っているディープな東京を伝えたい”という思いから「Tokyo Hidden Gems」というコミュニティを2018年4月に立ち上げる。メンバーは2019年10月現在、400人超え。
#feellikealocal #deeptokyo をキーワードにこれまで6回、東京の穴場を巡る街歩きツアーを開催。 参加者である在日外国人経営者や、大使館勤務の方、ハーバードより入学が困難と言われているミネルバ大学の学生から高い評価をいただいている。
Instagram @tokyohiddengems
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