最初の特集は、
中国人双子姉妹のYipingさん・Yifangさん。
お2人とは「人の笑顔を残したい」という思いを掲げ、スマイルプロアートを立ち上げられたカメラマン・西野さんとの撮影がきっかけで出会いました。
「カジュアル着物」をもっと世の中に広めるため、
普段は会社員として働きながらも、休日は自分たち自身でイベントを企画・開催。モデル活動に勤しんでいるそうです。
「もっとハッピーに生きるには。」
2人の“今まで”と“これから”について聞いてみました。
着物との出会い、そしてナレソメ。
「日本のアニメが中国で流行ってたんですよね。テレビで普通に流れてました。コナンや、スラムダンク、セーラームーンとか全部。ちょうど私たちくらいの世代からだと思います。アニメや漫画の影響で、日本に対して良いイメージを抱くようになったのは。」
そう話すのは、双子の姉のYipingさん。
取材の先月までは日系の化学メーカーで、経理として数字を相手にバリバリと働いていたけど、別事業で展開していたインバウンドにも携わっているうちに
業界の面白さに目覚め、つい最近転職したそう。
今日も日本舞踊の職人さんに、つい先ほどインタビューしていたというから驚き。
黄色のベレー帽に、着物風のゆったりとしたスタイルがとっても素敵。
同じく金融関係、中堅の監査法人で働く妹のYifangさん。
Yipingさんの言葉に、うんうんと頷きます。
「もともと私たち2人とも、絵を描くことが好きで。平面的な東洋の絵とか。よく模写してました。アニメの世界観やキャラも好きだし、絵も好きで。それで、セリフを何度も耳にするうちに、日本語も好きになりました。」
漢字に馴染みのない欧米圏の人たちにとって、日本語はとっても難しい言語であることは有名な話だけど、私たちよりもよっぽど漢字に親しい中国では、予想通りそれほど苦痛ではないみたい。
日本語検定1級は、やっぱり当たり前にサラッと所持していました。
Yifangさんは、なぜ今の監査法人に入ったのか。
その理由を聞いてみると、面白い答えが返ってきました。
「監査法人に入ったのは、一つのポジションにいながら色々な会社のビジネスモデルが見れるので。その業界のビジネスモデルを知って、やりたい事業を見つけたくて。それで、自分の事業を立ち上げる能力をつけたらいいな、と。最終的には、最高責任者になれたら、と思います。笑」
はにかみながら、これまた実にサラサラと語るYifangさん。
長年温めてきた並々ならぬ秘めた思いがあると思いきや、意外とそうでもない様子。
「でも、自分でビジネスをやりたいって思ったのは、割と最近なんですよね。笑 世間一般の“もっとハッピーに生きたい”っていう波に、私たちも乗りたくて。社会人になってからいろんな人、外部の人と関わることが増えて、そう思うようになりました。」
「所属しているNPOも、トップの人が会計士であるのもあって財務や金融関係の人が多いし。みんなも本職しながら、NPOなり他の活動をしていて。思えば、今まであまり積極的に、自分たちで選択して来なかったなぁって。」
生き方を模索していく中で、フェイスブックを通じ「着物組」の活動と出会い、
フォーラムやイベントに参加。
もともとアニメや着物など日本文化に傾倒していた2人にとって、大きな転機となったようです。
「着物に惹かれた理由は、個性的なものに憧れがあったんですよね。着物は、大量生産じゃない。和裁なので、身に付けた瞬間にカタチになる。だから自分で色々アレンジが出来るんです。二次創作みたいな。柄もそうですし、帯との組み合わせも無限なので、それだけ本当に奥が深いです。ファッションが好きな人にはおすすめですね。」
目をキラキラと輝かせて、流れるように言葉がどんどん紡がれてゆきます。
「特に、リサイクル着物はおすすめです。何千、何万とある着物の中から、自分に似合うものをpickupするのは本当に楽しいですね。あと、社会的にも循環します。例えば、おばあちゃんから引き継いだり。着物は長持ちですし、循環します。そもそもリサイクルを前提に作られているので、バラしたら一枚の布になるんですよ。すごく環境にもいいんです。直線的なシルエットは他のどの民族にもありませんし、着物自体が本当に優秀なんです。」
思わず聞き惚れてしまうような美しい日本語、
そしてそんな日本語に彩られた、着物という存在。
着物というと、どうもおばあちゃんなど年配の人が着ているイメージを想像して
気持ちが萎えてしまいがちでしたが、そんな自分を恥ずかしく思うほど、2人の言葉には人を惹きつける静かな力がありました。
スーツ=思考停止のシンボル
最後に、今の日本についてどう思うか。
抽象的だけれど、これを聞かずしては帰れなかった、ずっと聞いてみたかった質問をぶつけてみました。
「今の日本は、すごく変わってきていると思います。実際日本に来てみて、ギャップというものはあまり感じませんでしたね。びっくりした、っていう経験は特にありませんが、違和感はあるかも。例えば、英語に対する異様な不安感とか。英語がちょっとうまかっただけで、”帰国子女?”って聞かれる風潮とか。中国では、英語教育は都市部だと特に進んでいます。子供の英会話教室がたくさんあります。私たちは、小学3年生の時から必須科目になりました。数学と同様、主要科目の一つとして。それとは別に、英会話スクールに通っていたり。私たちも実は通っていました。笑」
一昔前の一人っ子政策により、中国において教育が異様な熱を帯びることになったのは周知の事実。
グローバル人材が豊富であったり、キャッシュレス化が進んでいたりと、世界的にみてもここ数年脚光を浴びることが多くなりましたね。
彼らに、日本人の「はたらく」について、思うがままの正直な意見も、聞いてみました。
「新卒とか、みんなが同じレールに乗っているのは、ちょっと、と思いますね。中国は、アメリカに近いと思います。卒業後にインターンしてそのまま就職か、はたまた就活するか、って感じですね。子供産んだら仕事を辞めるとか、信じられないです。中国は、基本共働き。子供は祖父母に預けるか、ベビーシッターに預けるか。都市部では、女性の方が男性よりも高い地位に就いていることも珍しくありません。家庭でも、女性の方が地位高いことも多いですね。」
日本の家庭でも、母の方が父よりも強いケースもよくある、例えば私の家庭のように、と私が言うと一同和やかなムードになりました。(笑)
そういえば昔、アルバイト先にいた中国人の主婦の方の話なのですが、
「日本人の大学生の女の子の夢が主婦だなんて、すごく勿体無い。せっかく高い授業料まで払って大学まで行かせてもらっているのに、なぜ。全く理解できない。」
と心底嘆いていたことを思い出した私。
2人に聞いてみると、興味深い答えが返って来ました。
「ケースバイケースだと思います。主婦でも、個人事業主としてやっているのは良いと思います。ただ、自分の人生を持たない主婦はちょっと。」
中国での就職市場は欧米のモデルに非常に近く、転職も非常に頻繁に行われるそうです。
就業時の服装も日本ほど形式的ではなく、ビジネスマンでももう少しカジュアルとのこと。
「一番無難だから、というそれだけの理由で選ばれたスーツは、思考停止のシンボルだと思います。」
これからのtwinskimono
「仕立ての良い着物が、安価に売りさばかれているのを見ると、勿体無いと思います。なので、着物を新しく作るインセンティブは無いですね。むしろ、古いものの方が良いです。ただ、着物だけだと市場として小さいんですよね。プラットフォームを作りたいと思っています。ビジネスモデルは、まだ悩み中ですが。」
「ニーズとか、現場の人とはまだ関わっていないですし、、どちらにせよ、自分たちがプレイヤーとしてやっていくのは限界があるので、テクノロジーやIT関係の人と組めたら強いかなあと。まあ、そこらへんは、これからYipingがやってくれると思います。笑」
PROFILE

日本在住8年目の中国人双子姉妹。「着物は人生を自分らしく、豊かにする力を持っている」がモットー。2年前から浴衣がきっかけで着物世界に惚れ込む。着物は究極のファッション。
着物を日常ファッションとしてもっと多くの若者に着てもらい、着物を通じて、自由に生きる豊かな人生を実現するためにkimonokibunという団体を立ち上げ、着物イベント20回以上主催している。
この記事を書いた人

“数ある国の中から、わざわざ日本を選んでくれた外国人に、1人でも多く。 正しい知識を持ってリアルな日本を伝え、恩返しをしたい。”
合格率15.6%の難関国家資格「全国通訳案内士」を、23歳という若さで2017年12月に取得。以降、フリーランスの通訳案内士として、東京を拠点に活躍中。趣味はお散歩とカフェ巡り。
旅行好きの両親に恵まれ、幼少期から日本全国を旅し、これまで訪れた都道府県は33県以上。 学生時代はホステルにて勤務、卒業後は旅行業界最大手である株式会社JTBに新卒入社を果たす。
観光業に日々従事する中で、”観光地だけでない、ローカルだけが知っているディープな東京を伝えたい”という思いから「Tokyo Hidden Gems」というコミュニティを2018年4月に立ち上げる。メンバーは2019年10月現在、400人超え。#feellikealocal #deeptokyo をキーワードにこれまで6回、東京の穴場を巡る街歩きツアーを開催。 参加者である在日外国人経営者や、大使館勤務の方、ハーバードより入学が困難と言われているミネルバ大学の学生から高い評価をいただいている。
Instagram@tokyohiddengems